左から順に、数々の賞を受賞している純米大吟醸原酒「明石鯛」、ビジターセンター限定の無ろ過本醸造生原酒「明石鯛」(※時期により異なる)、ピュアモルトウイスキー「波門崎(HATOZAKI)」。日本酒「明石鯛」は、豪華客船クイーンエリザベス船内でも長年取り扱われている。
兵庫県南部に位置する明石市は、日本時刻の基準となる東経135度日本標準時子午線上にある「時のまち」。また、明石海峡を横断する世界最大級の吊橋「明石海峡大橋」や、瀬戸内海を臨む海外線の美しい景観、そこで育まれた海の幸にも恵まれた「海峡のまち」。
この地で1918年、明石酒類醸造株式会社がスタートした。最初は焼酎のみを製造・販売していたが、その後に日本酒、創業100年目にはウイスキーとスピリッツの免許を取得。現在、明石の土地や気候を生かした日本酒、ウイスキー、ジン、リキュールを造り、世界35カ国をマーケットに展開している。
一際目を引く外観の「明石酒類醸造&海峡蒸溜所ビジターセンター」。
「明石酒類醸造&海峡蒸溜所ビジターセンター」は、日本文化の情報発信と体験の場として2022年の夏にオープンした。お酒の試飲や商品の購入ができるほか、海外で人気の銘酒「明石鯛」や、ウイスキー、クラフトジンの製造現場もあり、見学ツアーやイベントが開催されている(webで予約受付中。ただし、2025年2月まで工場改装につきツアーの募集は行っていません)。
館内は、“伝統と革新”を感じさせる開放的な和モダン建築。
杜氏でもあり代表取締役の米澤仁雄さん。
米澤さんが海外に目を向けたのは2005年。まだ日本酒が世界にそれほど知られていなかった時代だ。米澤さんはまず、ヨーロッパの情報発信源であるロンドンにターゲットを絞って営業を開始した。狙ったのは、日本商社が介入するような日本食や日本人がオーナーの店ではなく、ローカルマーケット。ロンドンの電話帳に載っている番号を片っ端から国際電話をかけ、アポイントが取れるたびに飛行機に飛び乗った。「おいしいと言ってくれたら有名になれる−−」。味には自信があった。こうした地道な努力が実を結び、現地の口コミ効果もあって、現在英国では高級デパートや高級スーパー、パブなど200店舗以上で「明石鯛」が飲めるようになった。
海外の販路を広げた米澤さんは、次に「日本のお酒、それを支える日本の文化やアイデンティティーを、世界の人にもっと深く知ってもらいたい」と考えるようになった。「明石酒類醸造&海峡蒸溜所ビジターセンター」は、その思いを実現する拠点となる。
「海沿いで明石海峡があって、おいしい魚も獲れるし、関西のリゾート地の淡路島もある。日本のローカルな魅力を感じながら、お酒に込められているストーリーを知ってもらえたら、もっと日本のファンが増えるんじゃないかと考えました」
目玉となるのが、「清酒明石鯛を醸す酒蔵と海峡蒸溜所の見学ツアー」だ。
日本酒の原料となる酒米は、王様と呼ばれる山田錦。最高級の品質で収穫できる地元・小野市吉川町産を100%使用。
現在、売上の9割以上を海外に輸出している「明石鯛」の製造現場は、麹を作る部屋が3つある。昔の酒造りは寒造り(かんづくり)が主流で、10月から翌年の3月まで杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)が住み込みでお酒を造っていたが、今は冷却設備を整えて、一年中清酒を製造する「四季醸造」が可能になった。杜氏や蔵人は、自社の味を守る職人であり門番だ。
見学ツアーでは、杜氏である米澤さんが案内してくれる。
精米した米に麹を植え付け、仕込み水を加えて2~4週間、ステンレスのタンクで発酵させる。
発酵中のもろみ。日本酒の質を決める重要な工程。櫂棒(かいぼう)という長い棒を使って、丁寧にしっかりかき混ぜる。
麹作り、醗酵、濾過などの繊細な過程を経て、完成される日本酒。そこに、明石の海、山の豊かな自然と、温度湿度のバランスの良い気候が合わさって、「明石鯛」の個性を醸す。
ウイスキーの発酵タンクは、ステンレスと木桶の併用で4基。
米が原料の日本酒と変わり、麦が原料のウイスキーの製造現場に足を踏み入れると、香りが変わる。現在、明石酒類醸造のウイスキーは3種類あり、スコットランド・スカイ島のトルベイグ蒸留所で技術を学び、仕込みから造っている。
日本酒と違い、ウイスキーはかき混ぜない。麦汁に酵母を足して、96時間発酵中。
「蒸留酒は仕込み・発酵・蒸溜・醸成という工程を経て完成しますが、気候風土によって味わいが大きく変わってきます。蒸留技術はヨーロッパ仕込みですが、そこに日本の酒造りの伝統や明石の風土が織り重なり、希少なジャパニーズウイスキーの味わいとなるのです」
酒蔵で発酵が完了したら、モロミをアルコール度数が高い蒸留酒にするため蒸溜棟へ運ぶ。
使うほどに飴色になるポットスチル蒸留器を2つ使って、約6時間強蒸留。
ネックの中部に設置されている「サイトグラス」で蒸留の状況を観察。
発酵から蒸留まで1週間、そこから樽に入れて約3年。アロマも含め、細かくきっちり仕上げていく日本のウイスキーは、フルーティーで飲みやすい。
「力強さでは本場に負けるが、日本らしい華やいだ感じ。嗜好品には答えがないので、個性を蒸留する気持ちで造っています」
シングルモルトは2027年頃販売予定。
酒蔵と蒸留所の見学ツアーの後は、ビジターセンターのバーで試飲会。4種のテイスティングができる。
試飲はツアーに参加しなくてもできる。
明石酒類醸造の人気のラインナップがずらり。商品を購入したら試飲代は返金される仕組み。
明石酒類醸造 & 海峡蒸溜所ビジターセンター
住所:兵庫県明石市大蔵八幡町1-3
電話:078-919-1087
営業時間:11:00~17:30
定休日:火曜日、第2・第4水曜日
https://www.akashi-tai.com/jp/